今日の文化は室町時代が起原です 


 

鎌倉幕府を後醍醐天皇と足利尊氏が倒したのですが(1333年)、その3年後に尊氏が後醍醐天皇から奪取した政権を室町幕府と言っています。本拠を京都の室町に置くことが多かったので室町時代と言います。

 この室町時代は、文化の面では3代(よし)(みつ)将軍の北山文化(金閣寺)と8代(よし)(まさ)将軍の東山文化(銀閣寺)で今日一般的に有名です。

実は現在の日本の文化、生活様式の起源は、室町時代にさかのぼるでありまして、それ以前の文化や生様式は今日のそれとはまったくと違うと言っていいほどです。

お茶、お花、能・狂言(歌舞伎は応用編)、今日の民家(玄関、畳の間、襖、

障子、床の間、違い棚等)そして醤油、砂糖の使用、食物では納豆や豆腐等更に一日三食(以前二食)は室町時代を起源とするものです。

 仏教においては現在もっとも布教されている浄土真宗(一向宗)や日蓮宗等はこの時代に庶民の間で大きく広まりました。

 

 それでは少し具体的にお話します。

 お茶を飲むことが広まるのは鎌倉時代に栄西(臨済宗禅僧)が伝えた以来ですが、茶礼や茶道が定まってきたのは室町時代からで室町末期の村田珠光や千利休の茶道が今日の茶道です。禅と共に広がり中世、近世の教養人の必須科目でした。

 現在は女の人が中心に普及していますね。現在でも日本文化の代表の一つです。

 いけばなは今日華道とも呼ばれますが、15世紀に池坊専慶(六角堂頂法寺の住職)が名手として名をあげ以後池坊家のお家芸です。天皇や大名にも愛され、庶民にも普及し、今日も女の人を中心に、日本の文化の代表の一つです。

 能・狂言これも室町時代に成立した歌舞劇で当時は猿楽(能)言われ、天才的な観阿弥・世阿弥の出現で能は芸能の高い地位を確立しました。もともと庶民にも人気がありましたが、三代足利義満など歴代将軍、以後徳川家にも後援を得てそして明治から今日まで日本の芸能の高い地位にあります。日本人でそのしぐさや謡を全然知らない人はいないでしょう。

 戦国時代から一般民衆の間で盛んになり、今日も人気がある歌舞伎は能・狂言を崩した親しみやすい歌舞劇と考えて良いでしょう。

 それでは現在の民家です。西洋風の造りになり、板の間、テーブル、椅子

ベッドが多くなりましたが、しかし和風建築様式も建物の中に併存しております。この和風建築が室町時代発祥の書院造りのことなのです。書院造の特徴が今日残されているのは玄関、畳の座敷、角柱(丸太の縁を取った角材)ふすま、障子でしょうか、ちょっと前までは和風建築には、更に、床の間、違い棚、の室町時代からの書院造様式が残っていましたが今日では新築の民家には少ないでしょうか。

鎌倉時代まで貴族や豪族の住まいは寝殿造りでした。柱は丸太で角柱は使われません。(角柱の多用は室町時代の書院造りから)一つの部屋は大きくて廊下からの出入り口は両開きの観音扉(妻戸)、部屋は板の間で貴人いるところだけが畳を敷き、部屋間の仕切りの襖(ふすま)はなく、部屋の中は几帳、簾(みす・すだれ)などで区切る。外の間の障子はなく、しとみど(蔀度)(光を入れるときは板を内方に納める)

 庶民の民家はこれをずっとずっと小さくした物の延長と考えて良いと思います。

 こんな住宅は今の日本にはありません。今の日本の和風住宅は上記の室町時代の書院造りから出ているのです。

 食べ物については、醤油が使われ初め、砂糖が調味料として使われ初め(それまでは薬)普及しました。現在の日本人の料理の味付けの基本のスタートです。それから朝ごはん、昼ごはん、晩ごはんの一日三食制はほぼ室町時代からと言って良いでしょう。それまでは昼ごはんありませんでした。

 仏教の一般民衆への普及は鎌倉時代の禅宗の輸入、浄土真宗、日蓮宗などの創始ですが、実は浄土真宗(当時は一向宗という)や日蓮宗(法華宗ともいう)は室町時代に大々的にひろまり、信者が急速に増えました。今日、仏教宗派の信徒数は分かりにくいのですが、仏教団体からの届け出や葬式の数から大よそ日本人の半分は浄土真宗と言われています。(ほとんど人が葬式仏教でしょうが)

 

ところで もう亡くなりましたが、国民作家として又司馬史観として名高い故司馬遼太郎氏は、次のように言っています。「現在の日本人が鎌倉時代や、平安時代にタイムスリップしたらどこの国にいるか分からないでしょう。それくらい文化が現在と違う。室町時代の応仁の乱以降ならそこにいる人が自分と同じ日本人と認識するでしょう。」

 これを裏付ける内容が上述の私の話です。

 現在の日本文化は室町時代から始まったのです。それ以前とそれ以後は文化がまったくと言って良いほど違います。日本文化は二つに分けられるのです。

 政治史については触れていませんが、政治史も室町時代に起きた応仁の乱以前と以後では日本史が二分されます。

 室町時代は日本史の分かれ目の時代なのです。

以上

2013年7月27日

 

梅 一声